緒方直人

緒方直人は上手い役者でもなく、父親のように個性的な役者でもありませんが、ニュートラルな演技が持ち味の役者と言えます。
ニュートラルな演技とは、何の役でも出来てしまう反面、観客や製作者にインパクトがない役者に見えてしまうことは、緒方直人にとっては不幸であったかも知れませんが、1967年生まれですから、俳優としてはまだまだこれからで、本当の個性が現れてくるのもこれからの話です。
その意味では緒方直人は大器晩成型の役者と言えますが、俳優としては玉川大学在学中に、1989年青年座に入り、その前年には『優駿 ORACION』に斉藤由貴とともに主役に抜擢されています。
その翌年に青年座に入ったと言う事は、緒方直人の俳優としてのまじめさを示すもので、1989年には倉本聰『北の国から’89帰郷』に和久井勇次役で出演しています。
緒方直人の役者としての転機はNHKの大河ドラマ『信長 KING OF ZIPANGU』で抜擢された事が大きかったと思われます。
かって中井貴一が同じ大河ドラマ『武田信玄』で、無表情な演技を身につけて、演技の幅を広げたように、緒方直人も中井貴一と似たような演技を求められたようで、事前の予想に反して、かなり良い出来の演技でした。
2004年にはTBSテレビでのドラマで『世界の中心で、愛をさけぶ』で成人した松本朔太郎役や、NHK連続テレビ小説の『ファイト』では、ヒロイン木戸優の父親木戸啓太役を好演しました。
ただこの間映画の出演にはあまり恵まれず、青年座の先輩にあたる西田敏行の『日はまた昇る』に江口涼平役で出演したぐらいでした。
舞台のほうでもほとんど出演がなく、冷遇されていましたが、2005年に青年座を退団し、西田敏行と同じ芸能事務所オフィスコバックに所属しています。
神山征二郎監督の『草の乱』は困民党の事件を取り扱ったもので、緒方直人は主役に抜擢されました、続く神山征二郎監督の最新作『北辰斜めにさすところ』でも、三国連太郎が主演する久々の映画で、学生役として出演していますが、『草の乱』の老け役から一転した若い役を演じることで、戸惑いもありましたが、以前の不器用な緒方直人からは、想像もつかない進歩と言えるでしょう。
良い監督と出会わなければ、役者は飛躍しないものですが、神山征二郎監督との出会いは、緒方直人に巡ってきた最高のチャンスであり、この機会をしっかり生かして、俳優として大きく飛躍して欲しいものですが、心配する必要もなく、緒方直人は鈍重ながら、確実に良い役者に成長しています。やはり血は争えません。